読書のおすすめ

筆者が読んだホラー小説、エッセイなどを中心にご紹介しています。

読書のおすすめ ≫ 短編集

本の紹介:記憶の隠れ家

とても寒い日が続きますね。
筆者、川に氷が張っているのを見るのは久しぶりな気がします。

さて、本日は、家を掃除してたら出てきた小池真理子氏の
記憶の隠れ家を紹介したいと思います。
高校の時、よく読んでいたなあ。

この記憶の隠れ家は「家」に関する短編集です。
そして家に関する記憶、思い出にとらわれ続けている人たちを
描いた短編集でもあります。
「家」というのは人がいて機能するものであり、
いろいろな思い出を物と共にため込んでいることや、
人のいなくなった家はあっというまに傷んでしまうことを考えても
小説の題材としては欠かせないのだろうと筆者は考えています。
家が溜め込んでいる思い出は、良いものもあれば、悪いものも、
「見てはいけないもの」もあります。
物語はそうした家の「みてはいけないもの」を見てしまった人たちのお話しです。

幼き頃の、楽しかった、美しい思い出にとらわれ続けている
「刺繍の家」、コミュニケーションが苦手な妹と、自らが犯した罪に
捕らわれ続ける「獣の家」、継母の急死とともに家の片づけをしに来た時に
忌まわしい記憶が開いてしまう「封印の家」、妻の不倫相手のおぞましい秘密が詰まった
「花ざかりの家」、過去の罪と関係者の再会を描いた「緋色の家」
亡き夫の罪の証である「野ざらしの家」の6編で
それぞれの家が違った「みてはいけないもの」を語っています。

特に自分が怖かったのは最初の「刺繍の家」で
変わらない、変わっていないという事の恐ろしさ、いや変わってはいるのだけれど
変わっていないように見せかけている、この穏やかな狂気が一番恐ろしかったです。
まさしく「見なければよかった」と一番感じた短編でもありました。

興味のある方はぜひとも読んでみてください。
そして筆者や、短編の主人公たちと同じように「見なければよかった」という
気持ちを知ってください。


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本の紹介:自薦THEどんでん返し

あっという間に11月になりました。
今年、あと一か月です。時間が流れるのは早いですね。

本日ご紹介するのは、短編集の「自薦THEどんでん返し」です。
綾辻行人氏や有栖川有栖氏など著名な作家さんが
自分の作品の中でのどんでん返しをお薦めしてくれている短編集です。

どんでん返し、はミステリーや推理小説での技の一つではありますが
話の辻褄が合わなくなってしまうこともある危険な技でもあります。
お話のきれいな作家さんはこのどんでん返しもきれいに行われるので
読んでいて飽きないですね。

個人的にぞくっと来たのが法月綸太郎氏のお話しですね。
ある殺人事件で加害者が被害者を殺害した後に食した。
何のために?と、語り手である「私」と友人の法月氏が討論するのですが
討論が終わった後、そのあとの顛末がよくわからず、
もう一度読み返したときに意味が分かって背筋にきましたね。
なんかところどころ受け答えに違和感があったなとかおもったら。
同時に生命の極限状態やどこかにそういった倒錯がない限り、
カニバリズムを通常の精神の人間がやると精神崩壊してしまうんだなと。
そこまでしても屈辱を与えたかったんだなとおもうと、
加害者は被害者をどれだけ憎んでいたのだろう、と。

他には西澤保彦氏の自分を貶めた相手に
相手がどういう手を取っても社会的に死に等しいダメージを
与えることに成功した女子高生のお話しとか

有栖川有栖氏の「書くための機械」を死ぬほど嫌がってたのに
いつの間にか自室にその機械を設置していたお話しとかもおススメです。

一つひとつの短編は大体5分くらいで読めるので
皆様もぜひとも読んでみてください。

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本の紹介:超・殺人事件 推理作家の苦悩

あっという間に6月になろうとしてますねこんにちは。
今年なんかおかしいんじゃないのかなあ(30度越している気温を見ながら)
でも毎度おかしいからもう6月は猛暑を覚悟しておきましょう。

本日紹介するのは東野圭吾氏の超・殺人事件 推理作家の苦悩です。
8篇からなる短編集で、推理小説に関するブラックユーモアというよりは
ギャグです。
題名からしてそんな感じですね。
でも、毎回毎回殺人事件をいかに盛り上げて書かなければいけないか、
推理作家の皆様はいつも悩まれているのだろうなあ、と思います。

超・税金殺人事件は売れた作家が税金分を残しておくのを忘れて
何とか色々なものを経費で落ちないかなーと顧問税理士と四苦八苦するお話です。
なんとか北国での殺人事件にハワイを挟もうとしたりしています。
筆者これ週刊新潮で読んだことがある気がする。

超・理系殺人事件は専門用語ばっかり使っているお話を
何とか読み進めていくお話です。
肌に合わない、ではなくて普通にわからないっす。
で、このお話の謎は本そのものではない感じがするのがなんとも。
似非理系ってなんぞ。

他にも、作家が年を取りすぎて推理小説の枠を超えた
何か違うジャンルの物になっている
超・高齢化殺人事件とか
これは編集者に同情したくなる
超・犯人当て小説殺人事件(なお、本当に殺人事件になる予感)

と、推理小説作家に関するブラックなギャグが盛りだくさんです。
しかし東野先生ここまでやってしまって大丈夫なのでしょうか?

しかしこうやって、本の感想を書いているだけでも
結構あれこれ悩むのですが、
いちからいろいろとプロットから何から組み立てる作家さんは
大変だなあと思い、尊敬しながら本を読みたいと思っている今日この頃です。

それでは本日はこれまでで。

本の紹介:毒笑小説

新生活が始まっている人もそうでない方もこんにちわ。
筆者もなんだかんだでわたわたしております。

さて、本日も筆者にお付き合いください。
本日ご紹介するのは東野圭吾氏の「毒笑小説」です。
以前筆者がご紹介した「怪笑小説」と「黒笑小説」と同じ感じの
短編集です。

忙しい孫に会いたいあまりに誘拐計画を企ててしまう「誘拐天国」や
(なお、誘拐罪はそれが離れて暮らしている身内でも成立することがあります。
また、嘘であったとしても「狂言」として罪になることがありますので
絶対にしないようにしましょう。)
新種の生物に関する人間の身勝手さを描いた「エンジェル」
いわゆる「イヤゲモノ(もらってもうれしくない、困るお土産の総称)」をご厚意で持たせる
おエライさんの奥さんに表では嬉しそうな顔しても裏で愚痴をいう奥様達のお話の
「手作りマダム」などなど、
相変わらず、日常どこにでもあるリアルなブラックジョークです。

個人的に一番面白かったのは「花婿人形」ですかね
由緒正しい家に生まれ、何もかも母親の言う通りに過ごしてきた、
男性が結婚式でやらかしてしまった大失敗。
トイレに行くタイミングがわからずに・・・というのは結婚式の失敗では意外と多いそうですが、
(正しいタイミングは介添人というスタッフさんに合図するんだそうです)
息子を厳重に管理してきて、何一つ失敗をしないようにしてきた母親がどういう声をかけるのかも、
そして、その直前で「どうして式の途中にトイレ行きたくなった時を教えてくれないんだ」と
逆恨みしてた息子の修羅場を考えると、なかなか恐ろしいものです。

日常どこにでもあるからこそ、容易に想像が想像がついて苦笑いしかできない
そしてどのお話の結末も、「これ絶対修羅場だろうなあ」というところで
区切られているので、この後をどう想像するかもよしです。

それでは本日もこの辺で。

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本の紹介:黒笑小説

ゴールデンウイークも終わり、いつも通りの日常がやってきましたこんにちは
今年は大型の早すぎる台風が来たり、箱根山の活動が活発になってきたり
なにかくる、という予感をひしひしと感じさせてくれます。

さて、今回ご紹介するのはすでに何回目かの東野圭吾氏の
「黒笑小説」です。
以前ご紹介した「怪笑小説」同様、ブラックジョークをふんだんに使った
短編集です。

前半はある出版社と作家たちの黒いお話で

賞なんかいらない、と言いながらも賞を欲している作家と
おだてながらも無理だな、と腹の底で冷めている編集者たち。
一度の名誉に浮かれ、持ち上げられるサラリーマンと
そんな彼を「センスがない」とバッサリ切り捨てている編集者。
斬新な作品で賞を受賞した作家の授賞式の裏で
「さあ次を探そう」と相談している編集者。

それぞれの思惑に乾いた笑いしか出てこないリアリティさが
「もしかして東野先生は出版業界にいたのではないか」と
思わせるくらいに思い起こされます。
読んでいると小説も芸術と同じくある種消耗品なのだと思わせてしまう作品です。

後半は巨乳を求めすぎて丸みのあるものが全部乳に見え、
女性の胸が全部巨乳に見える幻覚を患ってしまった男の喜劇、
モテなさ過ぎて商品として実用化されてしまったお話、
頭がよくてリアリティすぎるシンデレラなど、
これまた、読み手に黒い笑い、あるいは乾いた笑いを
もたらす作品です。

特に傑作だと思ったのがさいごから二つ目の
「笑わない男」です。
売れない芸人が決して笑わない高級ホテルのボーイさんを
あの手この手で笑わそうとします。
しかしボーイさんは決して笑わず、最後のチェックアウトで
ようやく笑ってくれますが・・・。というお話です。

うん、ボーイさんにとっては数々の仕掛けは
ただの困った客扱いだったんでしょうね。
「人を笑わせる」ということと、「人に笑われる」ということは
こんなにも違うのだと分からせてくれましたね。




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