読書のおすすめ

筆者が読んだホラー小説、エッセイなどを中心にご紹介しています。

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本の紹介:緋色の囁き

梅雨になりましたねこんにちは。
風邪でダウンしてたりGW明けでなぜか仕事が立て込んでいたりしたらこんな時期に。

さて本日の本の紹介は綾辻行人氏の「緋色の囁き」です。
綾辻行人氏の館シリーズとあわせて人気である囁きシリーズの第一巻ですね。

あらすじとしては、ある日全くよくわからないまま、いかにも怪しげな
お嬢様学校、聖真学園に、じぶんのことがよくわかっていない少女、冴子が転校するところから始まります。
そして時代錯誤の校則や、どこか不気味な少女や先生、なんだか重苦しい空気の
学校に戸惑っているさなか、開かずの間で一人の少女が焼死します。
「私は魔女なの」
謎の言葉を残して。
そしてそれをきっかけに、冴子の周りで級友が次々と謎の死を遂げることになります。
恐怖におののく女子高の中、冴子は謎の囁きが聞こえるようになり、
自分がその犯人ではないかと思うようになります。
はたして犯人はだれか?冴子に聞こえる囁きの正体は?

文章中からかんじるのはなんていうか「この物語、赤色以外の色がないなあ」という感じでした。
それゆえにたまに色として出てくる赤というのが鮮明にイメージされている、
そんな感じです。
物語の舞台の女子高が窮屈さと異様さを前面にだしていて、
それゆえにそこに詰め込まれている人全員の鬱憤や思いが見えてくるため、
さらに閉塞感と加速する異常さ(魔女伝説とか)を
思い起こさせて、いかにも絶対になにか事件が発生しますよ、と
言ってるようなもんだなあと思っていました。

読んでいて、犯行の動機は「最初の自殺、本当は殺人で
だれか最初の犠牲者の復讐のためにやってるんだろうなあ・・誰だ?」
というように読んでいましたが、犯人が分かって動機がわかったときは
思った以上に斜め上をいっていたので「わかるかこんなん!!」と思ってしまいました。

そして犯人の正体についてですが「そこからくるかー」といった感じでした。
しかしこんな危険人物おいておかないでください校長。
ヤバいと自分でもわかっているところに親類(冴子)放り込むとかなんの試練ですか。
なんというか事件のきっかけが発生してしまった事と言い、なんといい
本来であれば防げるはずの事件が、凝縮された悪意と閉塞感と、
そこに燻って完全に消えていなかった火種に、異物(冴子)を投入したことで
真っ赤に燃え広がったような感覚があります。
作中にでてくる魔女(平たく言うといじめのスケープゴート)の話と言い
全体的になんか重苦しい空気と不気味さが漂う作品でした。

魔女で思い出しましたが法での正当性がない私刑の事を「魔女狩り」と
いいます。ここでの魔女狩りもそうです。
その魔女狩りをしていた者たちが、正真正銘の魔女によって
逆に狩られることになろうとはなんともはや。

それでは久しぶりになってしまいましたが、本日もこのあたりで。

本の紹介:放課後

2月だから当たり前ですが寒いですね。
皆さんはバレンタイン、いかがでしょうか?
筆者は値崩れして30%から50%引きの限定チョコ買えてホクホクです。
え?誰かにあげたりもらったり?遠い昔のことですなあ。

今回紹介する「放課後」はこれまでも何度か紹介した
東野圭吾氏のデビュー作となります。
このころから片鱗が出始めている、人間心理のリアルさとやるせなさと
後味の悪さが「やっぱり東野圭吾氏は東野圭吾氏なんだなあ」と
思わせるものがあります。
今回ちょっとネタバレもあるのでご注意ください。

簡単なあらすじをご紹介すると、
女子高の教師である前島は少し前から
何者かに命を狙われ始めます。
自分が指導しているアーチェリー部の合宿に参加したある日
生徒指導室の同僚が何者かに男性用更衣室で毒殺されます。
現場は心張り棒がかけられ、隣接している女性用更衣室は施錠されており
密室状態になっていました。
もちろん大問題になり、その先生とひと騒動起こした生徒が疑われたり、
その生徒の不良彼氏に変に誤解されて蹴られたりと踏んだり蹴ったりです。
そんな中、第二の殺人が起きてしまいます。
前島の代わりにピエロに変装した先生が、アーチェリー部の催し物の
最中に倒れ、そのまま亡くなってしまったのです。
死因は毒殺、使われた毒は先に殺された先生と同じものでした。
ひと悶着あった問題児、脅されてた女性教師、ちょっと融通が利かない剣道部の優等生、
なぜか自分を誘ってくるアーチェリー部の主将、次々出てくる容疑者候補、
第一の密室の謎もありますが
そもそもなぜ前島は命を狙われることになったのか?
というお話です。


途中あたりから犯人は生徒なんだろうなと思っていましたが
ずっと前島がターゲットだとおもっていたので
狙われる理由がわからず、高校生が車まで使ってきた意味が分からないというか
そのあたりでずっと悩んでいました。
ただしこの思惑は犯人の思い通りだったわけで。
動機はネタ晴らししてくれるまでわからなかったです。

前島は自分にちょっかいをかけてくるアーチェリー部の主将ケイに真相を訪ねます。
ケイは最初はとぼけていましたが密室のトリックを暴かれたあたりで
観念して真相を話し始めます。
実行犯は物語の最初に手首をねん挫したといった部員の宮坂恵美でした。
恵美が犯行に走った動機は合宿の時に殺された先生二人に覗かれた「かもしれない」ということでした。
それだけであるならばまだよかったでしょう。
覗かれたとき、彼女はあまり人に大っぴらに言えないことをしてたらしいと。
思春期の少女には「人には言えない行為を覗かれた」という事が耐えがたいものとなり
そしてだんだんと彼女は先生たちに視線で凌辱をされていると思い込み
精神的においつめられていてしまいました。
やがて「こいつらが生きている限り自分は生きていけない」という殺意にまで発展し、
ケイが提案したトリックを実行に移してしまったのでした。

誰か大人に相談できていたらまだよかったと思うのですが、事情が事情だけに
言い出せなかったのも複雑だなあとおもいました。
「恥ずかしいところを見られたから死ね!!」はやられた方は理不尽でしかないけれど
ありえないことではないとは思います。
前島は単純に自分が「利用されていただけ」ということに
(ただし一歩間違えれば確実に死んでいた)深い無力感を覚えます。

「人を殺すのはこわくなかったのか」という前島の問いに
「私も恵美に聞いてみたけど」と前置きをしたうえで
「落ち着いて考えたら改めて落ち着いた殺意が湧いてきた」と。
彼女には人を殺してでも守りたかったものがあって、ケイにもそれがわかると。
このあたりは、前述した「恥ずかしいところを見られた」という恥ずかしさと
異性への恐怖、それに思春期独特の攻撃性と情緒不安定が一緒になってしまったんだろうと
推測はしています。

(前橋はこのことは誰にも言わないといっていますが
恵美のほうは明るい未来は待ってないだろうなと思っています。
他人を殺すところまで自分を追い詰めてしまった子です。
今は平気でも「人殺し」という耐えがたい事実に今度こそ自分で命を絶ってしまうのだろうと思っています。)

そして前島の
なぜ計画が終わった後も車をつかってまでも自分の命を狙ったのか?という問いに
「事件の後も一回は命を狙うふりしておけっていったけど、車までつかったんだ?」
こんなことをケイが言います。
このときに筆者は嫌な予感がしましたが、その予感はあたりました。

作中で前島は何者かに命を狙われている予感がしていますし、
実際に作中でも命を狙われています。
ただしそれは、事件が始まる前からであり、学校の中だけではなく
外にいたときにも狙われていました。
彼の予感は間違いではありませんでした。
事件が終わり、やけ酒で酔っぱらっていた前島は
なんと自分の妻の愛人に刺されてしまいます。
まあ前島も自分の妻に対して酷い事してきた人なので
因果応報というかなんというか。

物語の最後の後味の悪さもなかなかに来ますので
ぜひとも読んでみてください。

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本の紹介:暗い宿

暑い日が続きますねこんにちわ。
あのうろうろしている台風は早く低気圧に変わってほしいと思っている筆者です。
もどってくるなよ、関東に戻ってくるなよ。

さて本日紹介するのは有栖川有栖氏の「暗い宿」です。
そういえば筆者、数えてみると有栖川有栖氏の本を紹介していることが多いですね。
好きなんですね。きっと。

「暗い宿」は民宿・ホテルを題材にした短編集で、相変わらず事件に巻き込まれたり、
巻き込まれそうになっている火村先生と有栖川先生のお話しですね。
宿やホテルは一時といえど、様々な人が一夜をともにする施設ですし
様々な物語もあることでしょう。

表題の暗い宿、は有栖川先生が泊まった民宿跡から白骨が発見されたということで
火村先生を連れて調査に行くお話しです。
その宿は有栖川先生が泊まるときにはすでに閉鎖が決まっており、
取り壊している最中に白骨がでてきた、というお約束の展開でした。
犯人はもちろんその宿を経営していた女将さんでしたが、
火村先生から「そこにもう一つ死体がありますよね、探してもいいですか」に
「どうぞ」と返したのはちょっとびっくりしたというか、
そうとしか言えなかったのかもあるとは思いますが。
あそこで有栖川先生が泊まりに来なければ、完全犯罪が成立したかもしれず、
そういうところを見ると世の中は往々にしてよくできているなあと思います。

個人的に印象に残ったのは「ホテル・ラフレシア」でしょうか。
火村先生と有栖川先生が参加したミステリーツアーで
有栖川先生と一緒にきていた担当の方のわちゃわちゃをよそに
火村先生は何か気になるご夫婦と出会い、親交を深めていきます。
この方、だまされて最後の思い出に奥さんとホテルで無理心中をしようとしていたのですが
そのだまされた人が改心してお金を返してきた、というお話を信じて
無理心中を思いとどまった、というお話でした。
・・・うん、そんなうまい話あるわけないのにね。
ところどころに挟みこまれる有栖川先生と担当の漫才とシリアスの浮き沈みや
この最後の後味の悪さも含めて、個人的に今回のお話しで一番好きだなあと思っています。

そんなところで本日もここまで。
夏休み・・・は学校によってはもう終わっているかもしれませんが、
あとわずかです。今のうちに宿題終わらせましょうね。

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本の紹介:のぼうの城

いきなりあつくなってとけそうですねこんにちわ。
大河がちょうど北条攻め・忍城攻めなので今回は和田竜氏の「のぼうの城」をご紹介いたします。
太閤怖い・・・今までの大河の秀吉さまの誰よりも怖い・・・。

時は戦国時代後期、豊臣秀吉がほぼ天下をつかんだ時期です。
のこりは関東の大豪族、北条氏のみ。
豊臣は大量の兵と物資を従え、北条攻めにかかります。
そしてその大量の人員と物資に真綿で首を絞められるように負けて、北条は降伏することになります。

さて、ここで唯一、豊臣勢の思い通りにいかなかったのがこの忍城攻めです。
このお城は言ってしまえば「ついで」だったのですが、そこの城は粘りに粘り、
攻撃を任されている石田三成は水攻めをしようとして堤防が壊れるわ
焦れて攻撃すれば待ってましたとばかりに反撃でたたかれるわ、結局忍城が落ちる前に
北条が降伏してしまって、その使者がきてからようやく開城したという逸話があります。
ちなみに水攻めは最近の研究だと本当は三成はやりたくなかったようで、
ほかの武将もまあ水攻めするんだろうからと、あまり積極的に攻撃しなかったんだとか。

こののぼうの城では史実とは違い、実は裏ですでに降伏をする、という取り決めがあったものの
難攻不落の忍城をおとしたという手柄がほしかった秀吉が石田三成に命じ、
わざと成田長親を怒らせて開戦させます。
籠城している武将ははじめこそ「えええー」状態でしたが、やがて覚悟を決めて
豊臣勢と戦うことになります。
2万対3千(非戦闘民含む)、加えて特に戦が強いわけでもなく、頭も切れるわけではない
長親であだなを(でく)のぼう様とまで言われる城主・・・
ただし長親は、なぜかとても領民に好かれる殿さまでした。
ここに、今も伝えられている「忍城攻め」が開始されるのです。

ネタバレですが長親は人望が最大の武器です。
非戦闘員で武器なんて持ったことがない農民が「おらが殿様のためにやったるか」と
武士を切り倒し、負傷したと知るや「殿さま(とうちの田んぼ)に何してくれるか!」とばかりに
水攻めの堤防を切り崩して石田方に大きな被害を出したりしています。

物語の終盤、先に北条方が降伏したことでようやく終戦となり
降伏の条件の話し合いの時「財産おいてけよ」とった石田方に
「それはこちらに死ねっていってるよね?うちはまだまだやれるよ。」と言い放ちます。
もうこの場面で実質、石田方は負けたのだなあと思うには十分でした。
だって3千ちょいの軍勢が、2万+あと詰めの軍勢に対して
「かかってこいや」って言えちゃうんですよ。
筆者はずっと、のぼう様にたいして大丈夫かこの人、とう感じでみていましたが
ああ、この人やっぱり(たぶん)大物なんだなあと思います。
よく考えれば人に好かれるというのも才能の一つですし、
この戦いの相手がその後、本人はあまり悪くないのに
飛躍的に敵を作っていくことになる石田三成だったというところも
また何とも言えない対比だなあと思いました。

大河でこの豊臣方唯一の敗戦がどう描かれるか今から楽しみです。
戦国時代はこうでなければ。

ということで本日はこのあたりで。

本の紹介:海難1890

今年もあと半月ほどすれば終わりになりますねこんにちわ。
一年が過ぎるのは早いものです。

今回ご紹介するのは海難1890です。
先週12月5日に映画が公開されているので知っている方も多いと思いますが、
日本とトルコが協力して制作された「海難1800」の小説版です。

この作品は日本とトルコの間に起きた二つの事件・事故をもとに作られた
国家間を超えた友情物語です。

1つは明治時代に起きたエルトゥールル号遭難事件で、和歌山県沖で
台風にあい、沈没してしまったエルトゥールル号の人々を助けるために
小さな村の人たちが総出で救助と生存者の介抱にあたりました。
この事故はトルコ国内で大きく伝えられました。

もう一つはその約100年後、イランイラク戦争にて、
日本国が邦人のイラン国外脱出の対策にてこずってしまい
タイムリミットはあとわずか、在イランの日本人が死を覚悟しはじめたとき
トルコのジェット機が邦人脱出にあたってくれました。
(なお、ジェット機に乗れなかったトルコの方々は陸路で脱出しています)

この物語のテーマは「利害・損得を超えた友情」です。
エルトゥールル号の時は小さな漁村の人達が自分たちの命を顧みずに
生存者の救助にあたりました。

イラン・イラクの時は相手はあの独裁者、どこで、どんな因縁をつけられて
ジェット機を撃墜されてもおかしくはなかったでしょう。
それをしっているもなお、日本人を助けるためにイラン行きのパイロットを
一人残らず志願した場面は胸があつくなりました。

うん、筆者この二件知らなかったらもうちょっとこの本楽しめたかもしれない(涙)
なんていうか知っているのがもったいないという事を実感するとは思いませんでした。

なのでこの2件を知っている方は本を購入されるよりは映画館に行かれたほうが
いいと思います。この作品は本で読むより映画館で観賞する作品ですね。

話は変わりますが、現在、世界情勢は日本が思うより逼迫しています。
トルコも例外ではなく、ISISだけでなく、ロシアとの関係も緊張してきています。
この時期にこの映画が公開されたことについて何か思わないわけではありませんが
これからの事も日本も考えなければいけないのでしょう。

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